司法試験の試験期間中およびその前後の過ごし方について【司法試験直前期~終了後向け記事】
司法試験の直前期からの過ごし方はなかなかに悩ましいです。以下、参考までに過ごし方の一例を挙げておきます。
◆試験期間前
◎2か月前のあたり
∇体調管理
このあたりから、勉強の量を抑制して、体調管理を優先させてください。たとえば、この時期に風邪を引いて三日寝込むとします。3÷60=5%以上勉強期間が失われるわけです。試験が近づけば近づくほど損失は大きくなります。
∇答案作成は続けるべきか
ゼミ等での答案作成を続けるかは悩みどころです。後述のとおり、抜けている知識をカバーすることが必要になってきます。要は、インプット重視した方が良いよと言う話で、逆にアウトプットは削り始める時期かなと。
答案作成って、その準備や、復習等で一日終わってしまうので、結構重たいです。必然、ほかの勉強時間を削ってしまうわけですね。
しかも、書く能力は1~2か月で急激には伸びない一方、ちょっとサボってもそこまで急激には下がりません。書かないデメリットは、この時期に来るとそこまで大きくないわけです。
以上を踏まえて、悩みどころですが、2か月前まではまだ答案作成は続けても良いですが、週1くらいに抑えたほうがよいと思います。週2は多いかなと。
で、書かない場合は、書写がオススメです。筆力(これは2026年以降はタイピングスピードになるでしょうが)を落とさないためです。1日1頁でも、1答案(8頁)でも構いません。
∇インプットは何をするか
書く時間を抑制したら何をするかですが、インプットを重視して勉強してください。基本的には復習です。過去問を読むだけとか、演習書を読むだけとかもありです。
ただ、基本書を読むのはオススメしません。ちょっと重たすぎるので(読めちゃう人もいますけど、あれは例外的な人たちです)。試験対策に向けた教材、たとえば、論証集、条文、過去問、演習書、予備校問題集、(取捨選択した)百選、予備校テキスト、くらいが候補になるでしょうか。
この候補の上で、何を順番に復習するかですが、優先順位が高いものからです。復習している最中に、予定はどんどん遅れていきます。これは当たり前です。計画というのは「順調に遅れる」ものなのです。なので、時間切れになったときに困らないように、優先順位が高いものからやっていくわけです。
個人的な優先順位は、上に書いた「論証集、条文、過去問、演習書、予備校問題集、(取捨選択した)百選、予備校テキスト」だと思いますが、これはまぁそれぞれでしょう。
ちなみに、論証集等、一度やったから大丈夫、って感じの人をちらほら見かけますが、人間の能力ってそこまで高くないので、油断せずに復習してくださいね。試験終わったあと、ふとしたときに論証集を見返してみたら、試験に出た論点がそのまま載っていたなんてよくあることです(特に民事系)。
∇新しいものに手を出すか否か
インプットをするにあたって悩ましいのは、新しいテキストに手を出していいかです。いくつかの科目には「種本」と呼ばれるものがあります。要は試験の元ネタになっている教材のことです。
司法試験は知らないと解けない問題が当然出ます。で、合格者が潰しているであろうものは潰しておいた方が良いわけです。たとえばクレジットカードを勝手に使うのは横領ですか背任ですか。これは『刑法事例演習教材』に載っていますが、百選や予備校論証集等には載っていません。が、司法試験に出ました。
別にこれを潰していなかったからといって、劇的に不利になるわけではありませんが、潰しておいた方が有利なのはそうなわけです。
教材をどこまで潰すかの目安は、経験知的なもので申し訳ありませんが、各科目の「論点知識へのスタンスと使用テキスト」というタイトルの記事で「可及的」のランクをつけてで紹介しています。
もっとも、直前期に新しい教材をやり出すというのはよく知られた愚策の一つです。そのバランスを取って、1個だけなら2か月前に着手してもいいかなと思っています。2か月前から1か月で『刑法事例演習教材』を潰すとかですね。ちなみに、私は、当該時期に刑訴の古江本を潰しきりました。
∇短答の勉強はどうするか
短答の勉強は、直前期になると論文の勉強に圧迫されて少なくなりがちです。焦って論文の勉強をするので、論文の勉強時間が長くなってしまうからですね。
ただ、短答式の勉強は直前の方がむしろたくさんやった方が良いと言われます。記憶による部分が大きいので、直前にたくさんやった方が伸びるからですね。
この両者の折衷説として、1日にこなす問題数もしくは勉強時間を変えないという方法をオススメします。
1日にこなす量の決め方については、記事「短答で足切りされてしまった人へ」の「4.ノルマを決めておく」を参考にしていただければと思います。
◎1か月前あたり
∇体調管理
この時期から、試験日程に合わせた過ごし方をしてください。要は、夜型なら朝方に戻すようにということです。あまりにも早起きしている人は、逆に起きるのを遅くする感じですね。人間にはコンディションというものがあります。普段夜型の人が急に早起きして午前10時くらいからフルで脳を動かすことは難しいのです。事前に体を整えておきましょう。
∇答案作成はストップする
ここら辺から、ゼミ等の答案作成はストップした方が良いでしょう。書写することで筆力を維持するフェーズに移ってください。
∇インプットは何をするか
上述のとおり、復習重視なのは変わりません。上記の優先順位の高いものから復習していくのをそのまま継続してください。
∇新しいものには手を出さない
一ヶ月前はさすがにもう遅いです。新しいものに手を出すのは諦め、復習に集中しましょう。
∇短答式の勉強は継続する。
2か月前の時期と変わらず、短答はたんたんとこなしてください。
◎知識の最終チェック
だいたい試験1週間前から10日前くらいは、知識の最終チェックを行なってください。
私は、アガルート論証集に、要件・定義とかを付け足したものを読んでいました。全部読み切るのに、ちょうど10日くらいかかりましたので(これは結構かかっているほうだと思います)、逆算して、試験の前々日から(前日は完全に休むと決めていたので)10日前になったら論証集を読み始めるって感じでした。
この時期くらいに復習すれば、論証をある程度再現出来る程度には記憶は残っています。前日に一生懸命見返して暗記するなんてやらなくていいのです。
普段から、最後に見直すものを決めておいて、そこに集約しておくと、この知識の最終チェックが効率よく進むのでオススメです。ただ、あまり集約しすぎないように。多すぎると大変になるので。基本は論証集に載っているもので足ります。
なお、この時期は、短答の勉強は不要です。次に勉強するのは、試験3日目の終了時、4日目の短答式試験の前日です。
◎補足:勉強が全然進んでいない人へ
勉強全然進んでなくてテンパってるって人は、以上の復習重視の勉強をしてられないと思います。そういう人向けの方法について記載しているので、良かったら読んでみてください。
◆試験期間中
◎前日
試験前日は休んでください。暗記が不安すぎて徹夜で論証見る人とかいます。やめてください。
司法試験は論証を吐き出せたかで合否は決まりません。むしろ、膨大な問題文を処理できるかが重要です。このとき思考力を使うわけですが、徹夜のぼんやりした状態で処理できるわけがありません。論証なんて、ある程度再現できれば良いのです。
私は前日は9時~10時まで寝て(これ以上遅くなると夜寝にくくなる)、軽く朝飯食って、軽く散歩して、近所の飯屋の定食食って、読まずにおいてた週刊少年ジャンプ読んで、また軽く散歩して、近所のしゃぶしゃぶにしては格安の定食(1500円くらい)を食って、風呂入って寝てました。完全に休んでいました。
思い出してみてください。ナメック星に着く直前の悟空は何をしていましたか? 飯食って風呂入って寝てたでしょう。その前は重力100gという異常な環境で修行をしてたのにです。フリーザと闘うのにへろへろな状態ではダメなのです。
まぁ、休んでくださいという話です。
ちなみに、緊張しすぎて寝られないというのも大丈夫です。目をつぶって横になっているだけで脳は休まっています。一睡もできなくて受かった人もいますが、そういう人たちは別に勉強とかはしていません。横にはなっていて、きちんと休んでいたわけです。
◎1日目終了後
次に1日目終わった後どうするかですが、この日もできれば休んでください。
民事なんて知識で解くもんじゃありません。ぼんやりした知識はありつつ、三段論法でやり過ごすのです。論点にたどり着いた時点で7割くらい取ったようなものです。なら、論証確認のために徹夜するのは良くないです。
もちろん、絶対に論証を見るなとは言いません。また、一瞬で読み終わる人も別に見て良いですし、一部だけ確認するとかやっても良いです。でも、寝る時間だけは決めておいてください。
◎2日目終了後
2日目終わったら、疲れているので早く寝てください。中日に遅くまで寝ていると、中日に寝られなくなっちゃうので、早く起きるためにも2日目の夜は早く寝てください。
もちろん、酒はNGです。まだ早い。
ちなみに、このときに限らずですが、試験期間中に解答速報なりなんなりを見るのはやめてくださいね。ネット掲示板をみるなんてもってのほかです。
◎中日
で、中日ですが、本当はこの日も休んでほしい。
ただ、さすがに落ち着かないと思うので、刑事系の論証集をさらりと読むのはOKです。また、刑事は他の科目に比較して、多少論証の再現度を高めないとダメなので読むことは悪いことではありません。
それでも夕方までにして、17,18時以降はゆっくりしてください。
◎3日目終了後
で、最後、3日目の試験後は、短答をできるかぎり復習してください。短答の勉強はこの時点からが本番です。できる限り詰め込むのです。夕方以降も詰めましょう。ただ、夜遅くまでやらないように。午後10時くらいには寝た方がいいでしょうね。短答も頭を使いますから。
◎4日目終了後
短答終わったらパーティでもしてください。仮釈放の出所祝いみたいなもんです。むしろ私はこのパーティを楽しみに耐えていました。
◎まとめ
つらつらと述べてきましたが、要は、司法試験は知識だけで決まるわけではないので、それに沿った過ごし方をしてくださいね、ということです。
高強度・長丁場の試験です。闘い抜くために適した方法で過ごしてください。
◎補足:早起きしすぎると辛い
これはまぁ珍しいタイプだと思うのですが、朝5時くらいに起きる感じだと、最後の試験でガス欠になります。
人間は12時間越えて活動すると、思考力が酩酊状態レベルに低下すると言われています。酔っ払いながら行政と民訴は解けないでしょう。
私は、ラッシュを避けるために朝5時くらいに出ていた時期がありますが、まぁガス欠になってました。できれば試験会場の近くにホテルを取った方が良いです。
頭が働き出すのが起きてから3時間とか言われるので、悩ましいところですが、できれば7時くらいに起きるのがベストじゃないかなぁと思っています。ただ、ここら辺は人によると思うので、調整してみてください。
◎補足:受け終わった科目について考えない
私は試験が終わるたびごとに、問題文・答案構成用紙をゴミ箱にたたき込んでいました。終わった試験を考えないようにするためです。
見直しても1ミリの意味もありません。「あ~ミスった」と思うかも知れませんが、なぜ試験委員でもないのにミスったと分かるのか、そして、それによって試験に落ちるかもとなぜ判断できるのか。要は見直しは誤った思い込みを喚起するくらいしか効果ありません。
また、別に問題文・答案構成用紙を捨てても、試験後の分析では困りません(再現答案等の話です。これは後述します)。
ちなみに、ミスったという思いが拭えない場合は、「次で100点取ればいい」くらいに思ってください。ギャグではなく、そういう風に自分の思考をセットするのです。こうすることで感情をコントロールできます。まぁ、100点で思考するのが無理なら、A取れば良いやくらいで考えてください。
あと、これは別に参考にならないでしょうが、私は、司法試験用六法も3日目の論文試験終わってたら試験会場でゴミ箱にたたき込んでました。まぁ、奇行ですが、オススメですよ。短答に集中出来ます。
◆試験後の過ごし方
◎休むべきか、勉強すべきか
これはまぁ悩ましいですね。ここで遊びに振り切っちゃうと、合格まで何もしないことになります。そうすると、1年のうち8か月くらいしか勉強しない受験生ができあがります。
が、自分の体を労ってほしくもあります。司法試験は苛酷な試験です。自分では気付いていないだけで、身体的・肉体的ダメージは確実に蓄積されています。これが長年続くと、精神疾患になったりします。
個人的な話になりますが、私は3回目くらいから適応障害になっていました。それに気付いて通院を開始するのは失権してからです。しかも、自分からじゃなくて、ある先輩に「ちょっと様子が変だから行ってみたら?」と勧められて、すなわち、外的要因によってです。3回目くらいから、頭が働かなかったり、完全に不眠になっていたのですが、原因がよく分からなかったんですよね。
なので、ぱーっと遊んでほしくもあります。生真面目な人ほどそうして欲しいと思います。昨今の7月受験なら、プールでも海でも行ってください。私は先に合格していた友人に連れられて、湘南の海に行ったことあります。もちろん気は晴れきらないのですが、室内でうじうじしているよりは精神衛生上goodです。
折衷説としては、試験後1か月は遊んで、そこからまた勉強開始するってのが良いのではないかと。そのときも、一人でやっていると切り替えが難しいので、友達等と一緒に予定を入れてしまうのが良いですよ。外的なものを利用するのは合理的です。
◎再現答案を作るべきか
∇再現答案によって何を得られるか
勉強を再開するってなったとき、何をするかですが、一番最初に候補に挙がるのは再現答案の作成でしょうね。
ただ、私は再現答案まで作成することの意義には懐疑的です。あれは、本番の結果を参考に、自分に足りない点を分析することが目的なわけですが、それは再現答案を作るまでやんなくても目的達成出来ると思うんですよ。
再現答案まで作って漸く指摘されることって、三段論法が出来ていないとかだと思うんですが、そんなの、普段から過去問で答案作成の演習をやっているなら、当然に指摘されていると思うんですよね(なお、過去問演習の機会がない人は、まず過去問演習の機会を作った方が良いです)。
再現答案は作れるなら作った方が良いのでしょうが、そこまで必要かなぁ、というのが私の感覚です。
∇敗因分析は必要
ただ、敗因分析自体は大事です。途中答案になったら、なぜ途中答案になったのかの分析はした方が良いでしょう(知識が足りないのか、答案構成に時間がかかったのか、読むのが遅いのか、etcetc)。
司法試験って項目点形式なので、配点のある項目をきちんと書けていたかを分析しないとダメなわけです。もし書いていたのに点数が振るわなかったとしたら、それはなぜかを考えないとダメなわけですね。まぁよくあるのは事実の評価が抜けているとかです。
この項目点形式に沿った敗因分析を目的とするなら、再現答案まで作る必要はないのは理解してもらえるでしょうか。たとえば、各科目ごとに失敗したなと思う点をメモするくらいで良いかなと。もう少し拡充して、再現答案までは作成しないけど、書いた内容を思い出しつつ箇条書きで整理するとかもありですね。
∇試験で書いたことを100%再現する必要があるか
項目点形式に沿って敗因分析をするにしても、試験で書いたことを100%思い出さないとダメかって言うとそうでもありません。ある程度で構いません。
まずそもそもそんなこと不可能です。答案構成用紙を持って帰ってきたとしても、実際に答案構成用紙に書いているけど答案には書いていないこと、または逆のことなんてよくあります。
で、不合格になるほど点数をごそっと落としている場合って、論点をまるっと落とすか外すかしているか、三段論法(法的評価含む)が全くできていなか(これだと項目に当てはまることを書いても点数が入らない)、どっちかです。で、これって細部まで再現出来ていなくても、分かるんですよね。
なので、100%思い出さないととダメとして、汲々とする必要はありません。
∇その他次善策
私の周りで、再現答案を作れなかった人たちが次善策でやっていたのは、合格発表後に、再現とか関係なしに、本番の問題を解き直すってやつですね。
この時期になると、もう再現答案ではなく、ただの過去問演習に近いです。もっとも、これでもある程度は敗因分析になります。普通の過去問演習と違って、一度成績が出ているので、弱点分析の精度が上がるからです。
不合格後の勉強再開のきっかけにやってみるのは悪くないと思います。
∇まとめ
まーつらつらと再現答案作成をさぼる理由を書いてきましたが笑、勉強を再開するに当たって、別に再現答案を作る必要ないですよって話です。再現答案を作れるんなら作ることは何ら問題ないと思います。敗因分析の精度が上がるのはそうでしょうから。
まぁ適度にサボって、再現答案作成が勉強再開のハードルにはならないようにしてくれればと思います。
◎勉強の継続方法
再現答案を作るにせよ何にせよ、勉強を再開した後、どうやって継続するかも問題です。試験前にどういう形であれ勉強を一段落させるので、再開させた後、継続するに当たって、何をやるかってのも悩みどころになります。要はやる気が出ないわけですよ、試験前と同じことでは。私としては、以下の3点を押すすすめします
(1) 新しいことをやる
試験前に、やるべきで、やりたかったけど、やれなかった教材ってありますよね。それにまず着手するというのが一案です。潰せなかった有名演習書、百選、etcetc。新しいことってやる気出ますから。
(2) 単純作業から開始する
単純作業の代名詞と言えば、短答です。1日X問と決めておき、とりあえず勉強を開始するきっかけにするわけです。もちろん、やる気が継続するなら、その日は別の勉強を追加で行なうのも良いでしょう。
(3) 人の力を借りる
これはゼミをやるとかで、外的要因で勉強を継続する方法ですね。ただ、試験後にゼミをやろうなんてやる気に満ちあふれた人は少ないのが現実です。集まるだけはして、後は自由にするとかの次善策もあり得ますね。周りにそういう人がいなければ、予備校やロースクールの自習室にでもいくのも一案です。
◎気分転換
勉強ばっかりしているとガス欠になります。サマクラ、就活、インターン、講演会への参加、何でもいいです。やってみると良いですよ。自分が法曹になる理由を改めて考える契機になります。
あと、もちろん、適度に遊んで下さい。
◎まとめ
まあ要するに、いきなり試験前と同じ水準で勉強を再開するのは無理なので、徐々に勉強を再開していけば良いですよって話です。その際に何やるかの一案ですね、上記のものは。
参考になれば幸いです。