直前期(試験1~2か月前)でテンパっちゃってる受験生へ【司法試験&予備試験論文式試験 試験直前期向け記事】

◎はじめに

そんなにテンパらないでください。「出る前に負けることを考えるバカがいるかよ」と、故・アントニオ猪木氏も仰っています。

テンパる理由は、ほぼ100%「勉強が進んでいない」ということにあると思います。私が良く目にするの(ないし過去の自分)は、論点覚えていないとか、過去問やっていないとかです。

しかし、司法試験は、「これ知っていないと落ちる」という試験ではありません。もちろん、程度問題ではあるのですが、そのハードルは意外と低いのです。

もっとも、ある種の「思考の構え」みたいなのがないと、ただ漠然と膨大な問題群にぶち当たることになり、試験中に混乱してしまいます。

この「思考の構え」というのは、いわゆるリーガルマインドの最小構成要素、核心だと私は思っています。これさえあれば、一応闘うことはできるはずです。

ただ、勉強が全然進んでいなくて(これは勉強の方向性をミスってしまっているが故の場合もあります)、テンパっちゃっている人に抽象的な「思考の構え」とか話しても仕方ないと思います。

そこで、以下、具体的な勉強法について書きます。これをこなせば良いです。で、その上で、最後に補足的に「思考の構え」について解説していきます。「思考の構え」は理解していなくても、下記の勉強法をこなせばそれが身につきますので。

なお、以下に書くことぐらいはできてるよって人は、なんとなくテンパっているだけなので、自信を持って下さい。強いて言えば、「思考の構え」がないが故に、無限の勉強が必要だと思い込んでる可能性があります。以下の内容は多少はデトックスになると思います。ご参考程度に。

◎司法試験に必要な最小限の教材

司法試験で必要な最小限のテキストは何かというと、1.過去問、2.論証集です。

1.過去問をみないと、本番の問題で、何を聞かれているのか、何を書けば良いのか分かりません。

2.司法試験は論点を聞いています。そのため、論証集をみないと、何を聞かれているのか、何を書けば良いのか、分かりません。

以上の二つを潰す必要があるわけですが、時間がないので、やり方にちょっとしたコツがいります。

◎過去問をこなすコツ

過去問は解かなくて良いです。読むだけで良いです。

・問題文をさらりと読む
→模範解答またはA再現答案を読む
→問題文をもう一度読む。このとき、問題文の事実のどの部分が解答に使われているのかを意識する。
→以上の過程でよく分からない部分があれば、解説や趣旨実感を読む。

という方法で読んでください。

過去問は、「この問題は何を聞いているのかな」「問題文に載っている事実をどう使えば良いのかな」「どう書けばいいのかな」を知るための教材です。初見の問題を訓練するものではありません(そういうのは予備校答練でやるのです)。ならさっさと解答を読んで、聞かれている内容を認識してください。

思っている以上に過去問は同じ問題形式が出ます。同じ論点が出るのもそうなんですが、問題形式は本当に繰り返し同じものが出ます(逆に言うと、司法試験の問題類型は各科目数個しかないと言うことですが)。すなわち、過去問をやればやるほど、本番の問題が何を聞いているのか、どう処理すれば良いのかの見当がつきやすくなります。

なので、過去問の通読をできる限り進めれば、試験本番で何も分からず止まってしまうことはほぼなくなります。

ちなみに、通読の際、私は書写することをオススメしています。本番では当然、実際に答案を書かないとダメなわけですが、読むだけより書写して体を動かした方が書き方が「身につき」ます。読んで分かんなくても、体がなんとなくこうだなっていうのを覚えてくれます。

全ページ書写する時間がないなら、せめて1頁目くらいは書写してみてください。書き始め・書き出し部分の書き方が身につけば、「どう書くか」みたいな最初の段階でつまづくことが少なくなります。その後は要は要件と論点を書いていくだけなので定型です。この書き始め・書き出しをトレーニングを書写して身につけておくだけでも答案の書きやすさが変わります。

◎論証集

論証集は覚えてなくて良いです。目を通すだけで良いです。

論証集は、完全再現する必要はないのです。キーワードを軸に、4~6割の精度で再現すれば足ります。

一番のポイントは規範です。ただ、規範も漫然と読むのではなく、キーワードを意識してください。

たとえば、危険の現実化は、1.危険性、2.寄与度、3.異常性がキーワードです。「因果関係は、危険の現実化の問題である。行為の危険性、介在事情の寄与度、介在事情の異常性によって判断する。」くらい書けば良いのです。

要は、3語くらいしか意識するものはありません。もっといえば、1.は当たり前だし、3.は論証によっては2.と一緒にされることもあるので、究極は2.だけ意識すれば良いのです。

で、通して読めば、1週間くらいはぼんやり残っています。ぼんやり残っている記憶からなんとか現場で再構成するのです。

過去、司法試験合格の最年少合格記録を保持していた方曰く、「司法試験は、海の水をザルですくうようなものである。ザルで海の水は全くすくえない、すくったそばから流れ落ちていく。しかし、すくったばかりの時は水滴が網目にこびりついている。これが試験前の自分の知識である。このこびりついた水滴程度の知識で闘うんだ」と。

司法試験合格の最年少記録を保持していたことのある方、すなわち、「天才」ですが、その天才ですらこんなスタンスなのです。いわんや凡人の我々をやです。

覚えるのではないのです。記憶がどんどん薄まっていく中、なんとか残った知識をもとに、なんとか書くのです。

そのとき、そらで思い出すわけではありません。目の前に問題文があります。その問題文をみると、逆に規範を思い出せます。

たとえば、危険の現実化の場合、絶対に介在事情があるわけです。個人的にはH26年の赤子を連れ出したら車にひかれるというあまりにも劇的な事例が記憶に残っていますが、そういうのがあるわけです。そこから、「あ~、実行行為以外の特殊な事情なにか使うんだっけ~」みたいな話から、上記3要素を思い出すのです。

危険の現実化はあまりにも典型論証なので、あまり実感が湧かないかも知れませんが、万事こんな感じで解くのです。

なお、もちろん、繰り返した方が頭に残る水滴が増えるのは間違いありません。残り時間との兼ね合いで読む回数を調整してください。

◎知らない問題について

過去問と論証集で、既存の問題は解けるようになったとしても、全く未知の問題が出たらどうするのか、という問題が残ります。が、これも対策は難しくありません。

司法試験は二つの問題しかありあせん。「知っている問題」と「知らない問題」です。これは伊藤塾塾長の言っている話ですが、完全に同意です。

どういうことかというと、知らない問題への対処法さえ決めておけば、解けない問題はなくなるという話です。

ここからは私見ですが、知らない問題への対処法とはなんでしょうか。ただの三段論法です。

1.問題文の事実を参考に規範を立て、
2.趣旨等の規範定立理由はでっち上げる。

これで、論証と規範ができます。論点となっている点について、これを書けば良いのです

現場思考型の問題はこれで解きますし、典型論点なのに自分が知らない問題が出てきたら(本番中は典型論点だと知らないから分からないわけですが)これで粘るのです。

ちなみに、典型論点なのにうろ覚えの問題、どこかで見たことあるっけ~くらいの問題でも、この考え方は役に立ちます。論点だと分かっているなら、あとは上記の三段論法をすれば良いだけですから。この点からも、論証集を完全に暗記しなくても対処できると言うことが言えるでしょう。

なお、この思考は、過去問や論証の勉強が土台になります。まったくソラで思いつくわけではなく、過去問や論証で培ってきた解き方や知識を適用・流用・応用するわけです。

◎勉強計画と取捨選択

過去問読む、論証読む、その際は上述の読み方のコツを意識する。これでなんとかなります。

で、これを時間が来るまでできる限りやるのです。今日の○○時までは過去問通読、○○時からは論証通読、とかでいいです。勉強始めるときには1通だけ書写するとかも良いですね。

自分に足りないと思う部分を補う感じで取り組む教材・時間を選んでください。

「過去問やってる暇ねぇ!」ってんなら、論証集だけやれば良いです。ただ、それでも1~2年度分はやってほしいですけどね。既にやってるなら構いませんが。

自分にしっくりくる配分ならなんでも良いです。考えてみてください。

繰り返しになりますが、司法試験は「これ知っていないと落ちる」という何か明確な閾値がある試験ではありません。知らないことがたくさんある中で突入しなければなりません。そういう試験なのです。これはほとんどの人が共通で、程度問題にしか過ぎません。

知らない問題が出てきたら汗をかきながら思考して、三段論法で解けばよいのです。それでなんとか粘って沈まないようにするのです。そして、この思考は、普段の勉強で鍛えられています。

司法試験を解くにあたっての構成要素は、「解き方」と「知識」の2つです。これは増やそうと思えば無限に増えていきます。なので、積み上げていくしかないわけですが、過去問と論証によって積み上げていくことができます。で、自分が積み上げられた限りで、本番に突入するのです。知らない問題が出てきたら、手持ちの「解き方」と「知識」で適用・流用・応用して粘るのです。

(一応、この「解き方」と「知識」の話をもう少し理屈立ててすることができます。これが「思考の構え」の話です。これは後述しますが、理屈立てて理解するより、上述の勉強方法に着手してしまった方が良いです。習うより慣れろ、です。)

これさえやっていれば、最低限の「思考の構え」=「闘う構え」ができます。こういう構えがなく、単に司法試験にぶつかるとボコボコにされちゃうわけですが、これである程度は殴り返せます。一発かましてきてやってください。ラッキーパンチが出るかも知れません。

実際、なぜ司法試験に合格したこともないのに、落ちることについて確信できるのでしょうか。あなたの怯みはただの思い込みによるものです。

「出るからには勝つ」の心構えで受けるのです。それでも負けることはあります。試験なんだから当たり前です。しかし、気持ちで負けていては勝てるものも勝てません。勝つ気で向かってください。応援しております。がんばって。

◎補足:司法試験の「解き方」と「知識」

上述のとおり、司法試験の「解き方」と「知識」について、「思考の構え」について、もう少し理屈立てて解説します。これは、同じく上述の正しい論点へのたどり着き方の理解にも関わってきます。

司法試験の解き方は、1.事案処理方法に沿って事案を処理しつつ、2.その際は論点知識を照らし合わせながらやり、3.正しい論点を発見し、4.三段論法で処理する、と整理できます。

1.は、本ブログに各科目で整理しているので読んでみてください。知っていることばかりだと思います。三段階審査とか、請求権パターンとかです。

なお、この際、1-1.問題文の読み方のセオリーに沿って読むと事案処理しやすいです。事案処理を適切に進めるための方法と言った方が正しいでしょうか。こちらも本ブログに各科目で整理して書いていますので読んでみてください(もちろん私見なんですけどね。ご参考までに)。

で、1.事案処理方法だけだと、3.論点を発見しきれないので、2.のとおり、論点知識に照らし合わせながら考えるわけです。

4.は、知っている問題なら論証知識とかを使いながら、知らない問題なら上述の三段論法の方法を使いながら解答を作成するわけです。

こうやって思考方法を整理すると、司法試験の問題を解いていても全く太刀打ちできないというのはあまり出てこないと思います。

で、1.のトレーニングは過去問で、2.は当然論証集となるわけです。

予備校問題集とかじゃダメなの?って話もあるかも知れません。時間があれば、ステップを踏んだ方が良いのですが、もう時間がありません。

過去問には「独特のクセ」があるのですが、これを知っておいた方が当然解きやすいです。なので、ちょっとハードルが高くても、時間の関係から過去問をやった方が良いかなと。

しかも、司法試験は大問形式でなく、だいたい3設問くらいになりました。むかしは問題文が長大で、問題自体も難易度が高かったですが、いまはそうでもありません。予備試験もそんなに問題文は長くなく、問題自体の難易度も実はそんなにではありません。いきなりやってもなんとかこなせるのではないかなと。

もちろん、それでも難しいです。しかし、解答をすぐに見たり、書写を駆使したりとか、上述の方法をとればなんとか進められなくはないと思います。

まぁ、やってみてください。テンパっちゃって何も手につかないよりは良いと思います。

とりあえず、落ち着いて深呼吸してください。落ちたわけでもあるまいし。絶望するにはまだ早いです。大丈夫、心配しないで、なんとかなります。やるべきことを整理して順番に処理してきましょう。

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