短答で足切りされてしまった人へ【短答合格発表期向け記事】

悔しいですね。

私は初回の本試験受験時に短答落ちした経験があります。「あんなに頑張ったのに論文の採点すらしてもらえない」と泣きながら友達に電話していました。当時26歳、大の大人がみっともなく泣きじゃくってしまいました。そのあとは自分のふがいなさに落ち込みっぱなしでした。非常に恥ずかしかったので、大半の人には落ちた事実は内緒にしてました。

受験4回目のときに短答落ちしてしまった友人もいます。その時の彼の気持ちを想像すると辛くなります(ただ、その彼はいまでは弁護士です)。

ですが、前を向くしかありません。そして、あなたは他の受験生より有利です。なぜなら他の受験生が論文合格発表まで勉強に身が入らない中、先行して再スタートを切れるからです。3か月ちょっとの差は約100日、1日の勉強時間を10時間だとすれば、1000時間のアドバンテージになります。圧倒的です。

そして、そのアドバンテージを最大限活用するために、自分の敗因を分析しましょう。私の経験と個別指導の生徒からの聞き取りから検討したものですが、一般に敗因となるのは以下の3つです。


1.量が足りていない

短答の成績は基本的にその1年間にこなした量に左右されます。そして、合格したときと同じ量をこなせば基本的に再び落ちるということはありません。

たとえば私は、2回目の受験のときに短答パーフェクトを2周と半分(間違えた問題のみの復習のこと)を解いて受かりました。その後、少し量を減らして(というか勉強がうまく進まず減ってしまって)1周半しか解けなかった年にも受かりました。その後、基本的には1周半解いていましたが、一度も短答に落ちていません。

そして、短答を解いた量と成績は比例します。最後の年に改めて2周半しましたが、それまでは110〜120点代をさまよっていたのが、140点を超えました(ただ、これは直前期に詰めて解いてたのも影響してると思います)。


2.網羅性が足りていない

次に重視したいのは過去問の網羅性です。

たまに数年分だけ過去問を遡るとか、正答率の高い問題だけという形で問題数を絞って解く方がいます。が、あまり成績が振るっていないように思います。それは当然で、その遡った年度より昔の過去問が出た場合、または、過去問には出たけど正答率の低かった問題が再度出た場合、網羅的に解いていた人は知っている問題でも、そうでない人は知らないわけですから。短答パーフェクトでも肢別本でも良いですが、体系別の短答本を1周まるっと解いてください

ただ、時間が無いということでどうしても全問題解けない人がいると思います。その場合は過去問の年度や正答率で絞るというのは取りうる方法です。他の方法としては、肢別本の★がついている肢だけ解くというのをおすすめします。★から結構出ます。

なお、短答パーフェクトを解くときでも一肢ずつ正誤を確認し、間違えていたり、理由付が曖昧な場合は解説を確認してください。問題を解けることではなく、知識を確認することが重要ですから。


【補足】スピードを付けて解く

1・2を期間内に実行しようとすると、どうしても解くスピードが必要とされます。

そうすると、わざわざ条文やテキストを見て知識を確認するというのはスピードの妨げになります。

私は、問題を解いていて、「なんか頭で整理できないな」と思った問題だけ条文やテキストを見ていました。民法の根保証とかは条文見た方が早いんですよね。テキストで制度趣旨を確認したり。憲法の統治とかも条文見た方が早いです。他に、刑法の収賄罪のバリエーションは、表にまとめたりしました。

あと、単純に、パーフェクトより肢別の方がスピードを付けて進めることができます。解説が短いからです。好みの問題ですが、肢別で問題ない人はそちらをおすすめします。


3.論文の勉強を蔑ろにしている

予備受験生の方に多いのですが、足切りなのだから、まず短答の点数を合格点に上げなければならないとして、いきなり短答に集中してしまう人がいます。しかし、これは間違いです。

∇「幹」と「枝葉」

「新試になってから短答は基本的なことを聞くようになった。だからまずは短答を解こう」という話があります。確かに、旧試のいたずらに複雑でパズル性の高い問題に比べれば、普通になりました。しかし、それでも短答は細かい「枝葉」の知識を聞いてきます。

法律の知識は平坦に学ぶとキリがありません。まずは「幹」となる知識を身につける必要があります。それは論文の知識です。幹さえしっかりしていれば、枝葉はそれの応用なので、スムーズに理解することができます。

∇未知の問題を感覚で解く方法

また、短答は知識だけで解くものではありません。法学というのは基本的に両当事者の利益を比較衡量するという思考なわけですが、知らない問題でもこの比較衡量の観点で考え、正答に至る能力が必要です。そして、比較衡量の観点は、独自のものではなく、判例・通説の感覚に近しいものでなければなりません。

そもそもの比較衡量の思考と、それを判例・通説の感覚に近づけるというのは、まずは論文の勉強をしなければ養われません。一定以上になれば短答を解くときでも感覚を鋭敏にしていくことはできるのですが。

∇「まずは短答突破」というこだわりを捨てる

以上の点から、論文の勉強も蔑ろにしてはいけないのですが、短答にこだわる人に説明をしてもなかなか納得してくれないことが多いです。まずは短答だけでもと結果を出したい気持ちは分かるのですが、結局論文に受からないと意味が無いので、割り切ってほしいところです。


4.ノルマを決めておく

以上が私が分析する一般的な敗因です。ご参考になればと思いますが、たくさん解くにしても、今日解いた量が多いのか少ないのか、どれだけやらないとダメなのかが分からないと、機械的に勉強を進めることができません。そこで、勉強計画の立て方も書いておきます。

勉強計画を立てるに当たっては、1日のノルマを決めておくことをおすすめします。ノルマさえ決めておけば、1日どれだけ疲れていたとしても、「なんとかノルマだけはこなそう」と粘りが出ます。

立て方は、なんとなく1日何問とするのではなく、解かないとダメな問題数から逆算してください。

たとえば肢別で憲民刑だと全部で5000肢くらいあるわけですが、それを2周半となると、だいたい12500肢になります。それを試験日までの残り日数で割ってください。たとえば残り300日だとすると、12500÷300=41.666で42肢が1日のノルマです。

で、この数値は日々更新してください。たとえば1000肢解いて、残り250日になると、11500÷250=46肢が1日のノルマになります。すこしサボっていたのでノルマが少し増えた感じですね。

私はこの計算をエクセルを使ってやっていました。これで肢別を解けていないことでいたずらに焦ったり、無駄に時間をかけることもなくなります。


5.論文の勉強とのバランス

ロースクール経由の本試験受験生で初回受験の方や、予備受験生の方で、論文はある程度できるのに短答で落ちてしまうという人を見かけます。

これは単純に勉強量の問題です。勉強を始めて、ないしは短答を始めて1~2年程度だと、こういうことが起き得ます。

上記の方に限らずですが、短答で合格水準に達していない人は、やはり合格水準に達するまでは短答の勉強を優先した方が良いでしょう。ただ、上記のとおり、幹と枝葉の関係にあるので、論文を一切やらなくていいというわけではありません。

以下の記事で、論文と短答の勉強のバランスと順序について記載していますので、参考にしてください。(※「予備」と題していますが、本試験の方も変わりません。予備受験生で落ちる人が多いので、予備と題しているだけです)

→記事「予備試験における短答と論文の勉強のバランスについて」


◆最後に

以上が短答のアドバイスになります。模試を受けるとか、解くときの(小手先の)テクニックとかの話もありますが、上記の勉強方法で地力を付けていれば些末な話です。もちろん、本番形式や解く時間の感覚を身につけるために模試を受けることをおすすめしますが。

いま落ち込んでしまっていると思うのですが、切り替えて頑張りましょう。これは私見ですが、足切りされる人は能力ではなく、単純に(正しい方法での)勉強量が足りていないだけです。

とすれば、答えは一つ。すぐにでも勉強を再開しましょう。ファイトです。


(投稿日:2023年8月2日)

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