司法修習の勉強についてのメモ書き的なもの【司法修習開始期向け記事】

司法修習の期間はどうやって勉強したらいいのか、これが結構悩みものです。別になんとなく過ごしても二回試験はなんとなく受かりますが、せっかくなので効率よく、ないしは充実して学びたいですよね。

そこで、私が考える司法修習の勉強法をお話します(一応この観点にたって勉強していました。成績はそんなに良くなかったですが苦笑、すごく充実していたなと思います)。もっとも、方法というほど明確なものではなく、勉強の感覚的なものの説明になります。一言で言うならどうやって手を抜くか、みたいな話です笑

第1 司法修習中の勉強方法

1 勉強内容の分類

司法修習で学ぶ(学べる)内容は、(1)要件事実・事実認定、(2)手続的知識、(3)実務での慣習・テクニック、の三つに分けることができます。

(1)  要件事実・事実認定

ア 要件事実

要件事実自体の知識は、司法試験で学んだものの延長です。類型は、紛争類型別で必要十分です。

事実摘示するときにどう書くか、なんてのも学びますが、これは枝葉の知識ですね。

で、要件事実はそれ自体の知識も大切ですが、事実認定の前提でもあります。要件事実的に整理した上で争いのある部分に事実認定が生じるわけです。

なお、刑事では要は構成要件の整理ですが、司法試験の時に案外整理されてないので、起案の時に混乱したりします(たとえば、強盗傷人・殺人の実行行為をぱっと言えますか?)。

当然、起案では構成要件の知識は必要とされますが、司法試験のときに不十分だった構成要件の知識をあらためて整理することが必要だったりします。

イ 事実認定

事実認定も、要件事実と並んで、起案の成績に直結します。そして、この事実認定には一定の方法・枠組みがあります。

たとえば、民事において、事実認定は4類型に分けられます。
第1類型 処分証書があり、成立の真正に争いがない場合
第2類型 処分証書があるが、成立の真正に争いがある場合
第3類型 処分証書はないが、供述証拠がある場合
第4類型 処分証書はなく、供述証拠もない場合
この類型ごとに主張立証の目標が変わります。

こういう感じで、枠組みを学び、適用をトレーニングしていくことになります。
この枠組み自体がまぁまぁ理解が難しいと同時に、それを適用できるようになるのもまぁまぁトレーニングが要ります。

ロースクール経由の人はローの授業で、予備経由の人は実務科目で一定勉強していると思いますが、それをより深くまなぶ形になります。

ウ まとめ

要件事実と事実認定は、少々理論的な感じがあります。理論・枠組みを理解して、解いていく感じですね。

エ 補足:法曹三者の考え方を学べるのは修習だけ

この事実認定こそが裁判実務の中核だと思うのですが、法曹三者によって考え方がそれぞれ異なります。法曹三者がどのように考えているのか、比較しながら聞いてみて下さい。

そして、これは修習でしかできないことを意識してください。たとえば、裁判官はどういう観点を重視しているのか。全ての裁判官共通ではないと思うのですが、私はこのとき学んだことを意識して事件を考えたりしています。

(2)  手続的知識

これはまぁ覚えるだけです。たとえば、執行保全、和解調書に書くべき要素とかですね。

ただ、これらは理解が難しいわけではありませんが、雑多に出てきます。そこで、範囲を絞ることが必要です。

一言で言えば、「導入・集合修習で出てきた範囲」で絞れます。実務修習とかも含めると結構な量の手続に触れることになりますが、二回試験には出てきません。導入・集合修習でのレジュメ等の資料を繰り返し読んで理解・記憶しておけば足ります。

白表紙も読めば良いですが、レジュメに載っていないようなことは出ません(もちろん読めば理解に資しはしますが)。大部の専門書はもちろん読む必要はありません(読んでも良いですが)。

また、実務・選択修習で具体的に手続に触れることでイメージがつき、理解しやすくなったり、覚えやすくなったりします。まぁ、覚えると言うより、将来的に使えるようになることが目的なんですが、どうせ実務に出て実際に事件として取り組むまで身につくわけないので笑、手続に関しては二回試験を意識して軽く調べながら取り組む、くらいで良いと思います。

(3)  実務での慣習・心構え等々

三つ目は、試験に出てきません。ただ、実務に出てから結構役に立ちます。

手続の使い方のコツだったり、お客に対する接し方だったりです。個人的には、難しい事件に取り組むときの心構えみたいなのも学ぶことができたのが結構大きいなと思います。

こういうのもある種の学びだなと思って取り組むと、有意義だと思います。

2 教材について

民事は、『新問研』、『紛争類型別の要件事実』が要件事実です。

事実認定は、民裁起案は『事例で考える民事事実認定』、民弁起案は『民事弁護の手引』第4章の記載例が直接的に役立ちます。

(なお、民弁起案は、書き方が簡潔に書かれているテキストがありません(『民事弁護の手引』は記載例はともかく、解説部分が抽象的で、またそれも170ページ程度のテキストの中に埋もれています)。ただ、基本は民裁起案の枠組みと変わらず、枠組みに沿って一方当事者の立場から書いているという感じです。また、民裁起案は動かしがたい事実等のルールがありますが、民弁はそれが多少緩和されている感じです。『事例で考える民事事実認定』を読んで枠組みを学んだ後、『民事弁護の手引』記載例を読めばだいたいの書き方のイメージはつきます)

刑事は、刑裁は『刑事事実認定ガイド』、検察は『検察 終局処分起案の考え方』、刑弁は『刑事弁護の手引き』がそれぞれの事実認定のテキストです。

もちろん、それぞれの科目について導入・集合での授業のレジュメ等も役立ちます。

上記教材以外は、手続的なことだったりが書いています。事実認定のことも書いているのですが、上記教材を中心に学ぶのでそこまで熱心に読み込まなくても良いです。

正規の教材以外は、アディーレ法律事務所が、修習起案についてかなりコンパクトに解説している動画をアップしています。概要を把握するには役立ちます。ただ、やはり最終的には正規の教材に依拠してください。修習って時期によって教える内容が微妙に変わっていたりしますから。

3 まとめ

以上になります。言い換えると、それぞれの重要さにグラデーションがあるので、それぞれに適切な重さで取り組んでくださいね、ということです。すべて完璧に、というのは不可能ですから。

第2 修習までの過ごし方

さて、修習中は上記のとおりですが、修習前も課題を与えられます。段ボール1箱(2箱だったか?)分の白表紙を送られてきて衝撃を受けると思います。

ただ、基本的に上記の内容・枠を踏まえていれば、何に手を付けていいのかと迷うことはありません。

・アディーレの動画見る
→課題に取り組む(分からないのは飛ばす)
→課題で飛ばした事実認定系の問題を、上記「教材について」に記載の事実認定のテキストをざっと読みつつ(体系性あるので多少通読的に読む必要あり)、解いていく。
→課題で飛ばした手続系の問題を、手続系テキストを参照しつつ(通読不要)、解いていく。

というのがスムーズかと思います。

なお、要件事実はある程度勉強していると思うので修習前の段階では勉強しなくて良いです。

また、事実認定系のテキストをざっと読むと書いていますが、一生懸命読まなくていいです。任官任検を狙うならともかく、修習が始まってから読むので足ります。

これくらい要・不要を整理すればそこまで大変に感じないと思うのですが、いかがでしょうか。

第3 最後に

みなさん、司法試験から解放されたのだから、適度に遊んでください笑 修習前も修習中もです。これを読んでいる人は司法試験から解放された人が多いと思うのですが、修習の準備、予習復習のために汲々とするのは悲しい。合格から修習にかけては、おそらく人生でもトップクラスに楽しい時期だと思います。方向性と量を把握しさえすれば、憂いなく遊べるでしょう。

お伝えすることは以上です。
良い修習を!

このブログの人気の投稿

予備校論証集の使い方

短答で足切りされてしまった人へ【短答合格発表期向け記事】

今年の司法試験に落ちてしまった人へ【論文合格発表期向け記事】